コラム

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行方不明の相続人がいる場合の遺産分割

 

 相続人の一人が行方不明でも、その相続人を除外して遺産分割を進めることはできません。民法9071項は共同相続人による協議分割を定め、同条2項は協議が調わない場合または協議をすることができない場合に、各共同相続人が家庭裁判所に遺産分割を請求できるとしています。実務上は、所在調査、不在者財産管理人の選任、または要件を満たす場合の失踪宣告、という順序で対応を検討します。

不在者財産管理人を利用する場合、管理人は不在者に代わって遺産分割手続に参加できますが、遺産分割協議や調停の成立は権限外行為です。そのため、原則として、管理人を選任した家庭裁判所の許可を得る必要があります。

 

1 まず確認すべきこと――行方不明者の所在調査

(1) 相続人全員を手続に関与させる

共同相続人の中に所在不明または生死不明の者がいる場合、他の相続人だけで協議分割をすることはできません。したがって、行方不明者の所在調査を行った上で、その者を手続上関与させる必要があります。

(2) 住民票取得による調査

行方不明だと思われた相続人の住民票を取得することによって、新たな住所が判明して連絡をとることができる場合もあります。そのような場合には、通常どおり、その者も相続人に含めて遺産分割協議を行うことになります。弁護士に遺産分割手続きを依頼すれば、他の相続人の所在調査は容易に行うことができます。

 

2 不在者財産管理人を選任する方法

(1) 制度の根拠と申立権者

民法251項は、従来の住所または居所を去った者が財産管理人を置いていない場合、家庭裁判所が、利害関係人または検察官の請求により、その財産の管理について必要な処分を命じることができると定めています。共同相続人は遺産分割について法律上の利害関係を有するため、利害関係人として申立てを行うことができます。

不在者とは、従来の住所または居所を去り、容易に戻る見込みのない者をいいます。申立てに当たっては、不在となった経緯、帰来の可能性、申立人の利害関係などを申立書に記載し、不在の事実を示す資料を提出します。資料として、不在者の戸籍謄本・戸籍附票、返戻された手紙、行方不明者届受理証明書、調査報告書などが考えられます。

(2) 申立先と費用

不在者の財産管理に関する処分の審判事件は、不在者の従来の住所地または居所地を管轄する家庭裁判所に申し立てます。申立てにあたって、収入印紙800円分と連絡用の郵便切手が必要となります。郵便料は各裁判所によって異なります。

(3) 管理人の権限

不在者財産管理人の基本的な権限は、民法103条に定める、保存行為および代理の目的である物または権利の性質を変えない範囲内での利用・改良行為です。家庭裁判所が選任した管理人は、不在者の法定代理人として財産を管理し、遺産分割手続に参加することができます。もっとも、管理人は不在者の財産管理について善管注意義務を負うため、遺産分割によって不在者が不当な不利益を受けないように行動しなければなりません。

 

3 遺産分割協議には権限外行為許可が必要

(1) 許可の必要性

遺産分割協議は、保存行為や通常の利用・改良行為を超える処分行為であるため、不在者財産管理人が不在者に代わって協議を成立させるには、民法28条に基づく家庭裁判所の許可が必要です。許可を申し立てるのは不在者財産管理人で、申立先は管理人を選任した家庭裁判所です。

許可を得ずに行われた権限外行為については、無権代理として無効となります。したがって、管理人の関与が必要な遺産分割協議では、許可の有無を確認せずに協議書を完成させることはできません。

(2) 許可申立ての資料と裁判所の審査

家庭裁判所は、遺産の範囲・評価を記載した遺産目録、各相続人の取得財産および取得額を明示した遺産分割協議書案などに基づき、協議内容の相当性を審査します。

不在者の取得分については、法定相続分を確保することが原則とされています。ただし、民法906条の事情のほか、将来における不在者の帰来可能性や不在者の推定相続人の有無などを考慮し、法定相続分を下回る分割が認められることもあります。実務上は、帰来した不在者が請求した時点で他の相続人が代償金を支払う「帰来時弁済型」の協議が用いられることもあります。

(3) 調停・審判の場合

遺産分割調停で当事者間の合意が成立した場合には、成立予定の調停条項と同じ内容を中間合意として調書に記載し、その資料を権限外行為許可の申立てに用いる取扱いがあります。許可がされたことを確認した後、調停を成立させます。これに対し、審判は裁判所の判断であり、不在者財産管理人の処分行為ではないため、権限外行為許可は不要となります。

 

4 不在者財産管理人の業務終了

不在者財産管理人は、遺産分割が終了しただけで直ちに解任されるわけではありません。家事事件手続法147条は、不在者が財産を管理できるようになったとき、管理すべき財産がなくなったとき、その他財産管理の継続が相当でなくなったときに、家庭裁判所が、申立てまたは職権により管理人の選任等の処分を取り消す審判をしなければならないと定めています。

 

5 失踪宣告を利用する場合

(1) 要件と効果

普通失踪は、不在者の生死が7年間明らかでない場合に、危難失踪は、戦争、船舶の沈没、震災など死亡の原因となる危難に遭遇し、その危難が去った後1年間生死が明らかでない場合に、家庭裁判所に申し立てることができます。申立権者は、配偶者、相続人、財産管理人、受遺者など、失踪宣告を求める法律上の利害関係を有する者です。

失踪宣告は、不在者を死亡したものとみなす重大な効果を生じさせます。そのため、失踪宣告の申立権者である「利害関係人」は、単に不在者に対する債権者となる可能性があるにとどまる者までは含まれないと解されます。そのような者については、不在者財産管理人の選任を申し立て、管理人との間で権利義務の調整を図れば足りると判断されています。

(2) 失踪宣告後の相続関係

失踪宣告により不在者が死亡したものとみなされると、その者について相続が開始します。そのため、失踪者に配偶者や子などの相続人がいるかを確認し、失踪者側の相続人を遺産分割手続に関与させる必要があります。失踪宣告によって、常に他の共同相続人だけで手続を進められるとは限りません。

 

結論

行方不明の相続人がいる場合は、その者を協議から外すのではなく、まず所在と生死を調査します。その上で、早期に遺産分割を進める必要がある場合には、不在者財産管理人の選任を申し立て、管理人を手続に参加させます。管理人が遺産分割協議または調停を成立させるには、原則として、管理人を選任した家庭裁判所から権限外行為許可を得ます。長期間にわたり生死が明らかでなく、失踪宣告の要件を満たす場合には、失踪宣告後の相続人・代襲相続の有無を確認した上で、相続関係を整理することになります。

 

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