
相続が開始すると、被相続人の財産は一時的に共同相続人全員の共有財産となります。この共有状態を解消し、各相続人に具体的に配分する手続きが「遺産分割」です。
遺産分割はまず相続人全員の話し合い(協議)から始まり、それが調わない場合には家庭裁判所での調停や審判へと移行します。
遺産分割協議と協議書の作成
遺産分割の原則的な方法は、共同相続人全員による合意(協議)です。協議においては、法定相続分や遺言による指定相続分と異なる内容で分割することも可能です。分割の基準として、民法906条は、遺産の種類や性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態、生活状況その他一切の事情を考慮すべきとしています。具体的な手法としては、以下の3つが認められています。
- 現物分割: 遺産をそのままの形で分ける原則的な方法。
- 代償分割: 特定の相続人が現物を取得し、他の相続人に代償金等を支払う方法。
- 換価分割: 遺産を売却して金銭に換え、その代金を分ける方法。
合意に至った際は、不動産登記や預貯金の名義変更等のために「遺産分割協議書」を作成します。相続人全員が間違いなく合意したことを示すために、相続人の署名と実印による押印をすることになります。
家庭裁判所での調停と審判
協議が調わない、または協議ができない場合には、家庭裁判所に遺産分割を申し立てます。実務上、まずは調停委員が間に入り合意を目指す「調停」が行われます。調停が不成立(不調)となった場合、特段の手続きを要さず自動的に「審判」へと移行します。審判では、裁判官が民法906条の基準に従い、後見的な立場から裁量によって分割方法を決定します。審判の結果は、金銭の支払や登記義務の履行に関して強制執行が可能な効力を持ちます。なお、調停の管轄は原則として「相手方の住所地」、審判は「相続開始地」を管轄する家庭裁判所となります。
遺産の範囲に関する争い
遺産分割を進める前提として、何が遺産に含まれるか(遺産の範囲)について争いがある場合、注意が必要です。相続人間に争いがあり合意が得られない場合は、地方裁判所に「遺産確認の訴訟」を提起して確定させる必要があります。訴訟の結果が出るまで遺産分割手続きを中断し、判決確定後に再開する処理が一般的です。そのため、相続問題が解決するまでに相当の時間を要することになります。

